師匠の言葉

ご無沙汰してます(笑)忘れられた頃に何となく更新するスタイル。

自分が心から尊敬する先生方にレッスンしていただいていたのは、すでに40年以上前となり、記憶としては、もともと記憶力が良くない自分なので、放っておくと消えていく一方なわけです。

と言うことで、うっすらした記憶の中を辿りながら、自分が受け取った大事なものを次に渡せるのかと言うテーマを取り上げてみます。

大学で師事していた永濱幸雄先生の言葉。

「大学2年から3年にかけて、大きく変わることが出来たら卒業してから(プレーヤーとして)モノになりますね」

藝祭の最中、賑やかな中レッスンしていただいた時に、外から聞こえて来たmanto vivo(ビッグバンド)のライブステージの演奏を聞かれての一言だったが、今の自分が藝大で生徒達を見ていく一つの指標、考え方の元にもなっています。

当時とある伸び悩んでいたトロンボーン科の学生が、おっ!と思わず耳を引かれるアドリブソロをそこでは繰り広げていて、先生に「あれは誰ですか?」と問われて「〇〇君です」と僕が答えた後に話された言葉だった。続けて嬉しそうに「〇〇君はもう大丈夫ですね」ともおっしゃった。

教師になってから、大学の4年間、いやその前の受験生の頃からの学生一人一人の変化を傍から見ていると、いろんな気がつくことがあって、大学3年になるあたりで大きく成長する学生は、その後プレーヤーとして大きく羽ばたいていくことが多いと言う経験的なことなのかなと。

ちろん全員がそうとは限らないので、あくまで一例としての話です。成長はむしろ遅目の学生が多い気もするし。

大学の1〜2年は、高校から大きく変わった環境に慣れるためだったりで、漠然と過ごす時間が多く、後になってもっと練習だったり勉強しておけば良かったと後悔が後に立つわけだが、3年になると、一年後に卒業という現実が突きつけられるわけで、安定した給料をいただくということが考えにくいプロの音楽家の世界を前にして、ハッと気がつき、不安感に負けるというより「このままではいけない、何とかしなければ」と言う自覚が生まれてくるのが3年生だと思われるのです。

だから学生には、3年になった時に、より具体的に何をやりたいのか、どう言う仕事がしたいのか、自分に足りないものは何か、きちんと向き合い自覚することを期待しているし、そこに大きく成長のチャンスがあるものと思っています。

もちろん何度も書きますが、個人差が大きいものなので、マニュアル化はできません。そこがまた責任が重くも面白いところでもありますが。