人生も進んで来ると、誰もが経験することとは分かっていたし、覚悟もしていたつもりだったが、実際に両親を亡くして感じたのは、結構大きな心の穴だった。
父は10年前に亡くなっていて、この夏母が旅立った。聞いた話によるとリリー・フランキーさんの小説の中に「母の住んでいるところが故郷である」と言うような文章があるらしいが、とても共感する話だと思う。
父が居なくなった佐賀の実家を、母が一人で守ってくれていた10年間。本当は、せめて年に2回くらいは帰省して、親孝行でもできたら良かったのだけど、私がオーケストラを退職して大学に転職してからの10年間と重なり、慣れない教員仕事に忙殺されながら、あまり帰省もできず、またコロナ禍もあって、いつの間にか経ってしまった10年間。
本当にこれで良かったのか、ずっと後悔の念が頭の中に居座り続けている。
母の最期の1ヶ月は、弟夫婦の奮闘で、なんとか東京の医療介護施設に、佐賀から母を連れて来て入所してもらっていた。最後を看取り、東京で荼毘に付して、先日ようやく故郷の佐賀に帰って葬儀を執り行うことができた。医療、介護関係者、親戚、母のご友人の方々、本当に今までありがとうございました。それから弟夫婦とその子供達に、何もできなかった兄から最後までありがとうと、感謝の気持ちを伝えたい。
これから何度か実家を片付けに行かなければならないが、主人のいなくなった寂しい実家は、佐賀に生まれ育った佐賀の人間と言う今までの私のアイデンティティが揺らいでしまい、まるで根無し草となってしまった今の心境と重なる。
しかし佐賀の風景、人々の優しさ、のんびりとした風土は、これからも自分の中に在り続けると思うので、いずれ心が落ち着く時も来るだろうとも思う。
これからは佐賀の同級生、友人、先輩、後輩達と出来るだけ会いたいと思っている。