今年の夏、久々に聞く名前、ポール・モーリアのトリビュートコンサートが、オリジナルスコア、日本人の指揮者とオーケストラによって東京と大阪で開催されるとのことなので、私的に聴きまくったこのタイトルの両巨匠のことを、当欄では初めてだが書いてみたいと思う。詳しく調べて書くわけではないので、不正確なところがあったらすみません。
ポール・モーリアは我々の年代では聴いたことがない人を探すのが難しいほど、日本の音楽シーンでは愛されて来た人。一番有名なのはマジシャンがよく使うエーゲ海の真珠とか。モーリアが活躍した少し前にフランスではフランク・プウルセルが活躍していたが、モーリアと、同世代のレイモン・ルフェーヴルが活躍し始めて、フランス・イージー・リスニング界のご三家として日本でもテレビ、ラジオを中心として毎日のように彼らのオーケストラサウンドが流されていた。NHK-FMのサウンド・オブ・ポップスや、FM東京系列の城達也さんのナレーションで有名なジェットストリームなど、上質なイージーリスニング音楽が、地方でも頻繁に聴けていた良い時代が、確かにあった。
イージーリスニングとは、1970年代以降にアメリカで流行りだした、主に歌の入っていないインストゥルメンタル(オーケストラ)の音楽ジャンルを指すようだ。私が一番好んで聴いたのはアメリカのパーシー・フェイスで、フェイス自身はイージーリスニングと呼ばれることを好んでいなかったという話があって、私もどちらかというとあまり使いたくない気持ちが強い。ポピュラー音楽の中で、オリジナルの音楽と言うよりは、その時々のヒット曲や映画音楽を、それぞれのシェフのアレンジでカヴァーして競って発表していた音楽なので、最適なジャンルを表す言葉が、じつはいまだに無いというのが私の感覚。なので、イージーリスニング(暫定)みたいな気持ちでイージーリスニングと書いておきます。
このフランスの3人の中では、モーリアがセールス的には一番で、次がルフェーヴル、そしてプウルセルだと思うけど、この2人は本当に良いライバルだったのではないか。のちにフランスではカラベリと言うリーダーも現れたけど、私的にはルフェーヴルが一番でモーリアは二番目によく聴いた。
モーリアのアレンジの特徴は、とにかく都会的でオシャレで、チェンバロやその他の電子楽器を、基本のストリングスセクションの上に煌びやかに振り掛けた感じ。全体に細身でキラキラしている。金管は、主にバッキングに使われて、全体に軽量なビッグバンド風味。若い頃は金管の使い方が好きになれなかったが、今は受け入れられるようになった。
一方のレイモン・ルフェーヴルは、一聴してわかる骨太なサウンド。実のところは、こちらはまさに私好みのサウンド。骨格となるベースラインの作りが太いと言うか何というか。フレンチホルンを多用した全体に厚みのあるアレンジは、金管の使い方とともに私は好みだ。
比較すると女性的なモーリアと男性的なルフェーヴルの音作りと音楽作りと感じる。
まあしかしオーケストラのレコーディングは、とてもお金がかかり、本当に贅沢なものだ。テレビやラジオのBGMとして使うだけなら本当に勿体無い。2人の巨匠が次々とアルバムを発表し、ヒットを飛ばしていた時代が懐かしい。
この2人に限らず、アメリカやドイツ、そして日本でも、オーケストラ音楽のアレンジと指揮で、ヒット曲を各リーダーが競ってカヴァーして売れていた1970〜80年代を懐かしく思うし、その時代に音楽にのめり込んでいけた自分は幸運だった。高校生の頃はイージーリスニングのオーケストラに就職したいと考えていたくらいだ。もちろんイージーリスニングのオケは常設のオーケストラ団体ではないので、就職などは出来ないわけだけど当時はそんな事情も知らなかったな。
以下レイモン・ルフェーヴル1984年日本公演とポール・モーリア1985年日本公演のYouTube動画です。私はやはりライブ公演の演奏が好きですね。改めて驚くことは、約40年も前の公演という古さを全く感じさせないアレンジと演奏。両巨匠とオーケストラをご堪能ください。
https://youtu.be/ijVINZUa574?si=QZ06AO57REXzfY8t
https://youtu.be/BIhTQulK3RY?si=jQlrphEtPB_-WHzU