大学教師がトロンボーンの学生を教えることの周辺域 楽器編⑤

楽器とサウンドを考える5回め。楽器編は一応ここいらで、一区切りにしようと思います。

楽器は作業着や体操着、洋服のようなものだと書きましたが、今回は自己のサウンドが確立される前の段階にいる受験生の場合です。

現代の楽器は、メーカーの皆さんの努力によって、本当に良い鳴りで、音程も良く、倍音のバラつきも少ない素晴らしいものが増えました。

しかし、そのトレードオフとして、フィットするプレーヤーのタイプは狭くなってしまいました。逆にフィットすれば、きっと演奏や音楽性の上達のために素晴らしい体験ができると思います。

受験生や、まだまだサウンドが出来上がる前にある学生の場合、やはりビッグウェーブを潜り抜けて来た、スタンダードな楽器というのが、選ぶポイントになって来ると考えています。

例えば、私が永年使って来たV.BACHだと42Bのシリーズが代表的なものかと思います。F管への切替のヴァルブ機構は様々ありますが、好みで良いと思います。大きめで動きやすい体操着なタイプの楽器で、本人が成長すればそれなりにちゃんと反応してくれて、良い音が鳴った時に、サウンドの芯を感じられて、心地よく響いたと感じられることが、大事かなと思います。

若い段階では、ピアニッシモも大事だとは思いますが、まずは大きい方向のダイナミクスを無理なくバランスよく広げていきたいと思うので、フォルテ方向の入力耐性が高いことも、楽器にとって大切な要素だと思われます。

いずれにしても、音域が広くて、ダイナミックレンジが広くて、音程が良くて、反応が良くて、誰が吹いても超素晴らしいサウンドが出せる楽器があれば良いのですが、実際はそんなの無いので、不足しているところは、自分で努力してカバーしていければ良いと思います。

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